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DORAセミナー・シンポジウム

フレッド・クラーク氏講演会【前編】
「大規模の交通施設の開発について」

©Pelli Clarke Pelli Architects

建築や都市開発など世界で数多くのプロジェクトを手掛けている米国の建築設計事務所・ペリ クラーク ペリ アーキテクツ(PCPA)。2019年初春、その共同代表(シニアプリンシパル)を務めるフレッド・クラーク氏が来日し、鉄道やバスなどの交通施設を含めた街づくりについて、東日本旅客鉄道株式会社にて講演を行なった。

講演会の前編では、同事務所がこれまで世界中で手掛けてきた、鉄道駅やバスターミナルなどの交通施設を含めたプロジェクトについて紹介された。

ロンドン・ドックランズの再開発プロジェクト

最初は英国・ロンドン東部のウォーターフロント再開発地域ドックランズの「ワン・カナダ・スクエア・アンド・ドックランズ・ライト・レイルウェイ・ステーション」(1992 年)をご紹介します。敷地であるカナリー・ワーフはかつてかなり寂しい地域でしたが、それが30 年かけて現在の姿になりました。私たちペリ クラーク ペリ アーキテクツ(以下、PCPA)は1986 年以降この計画に参画し、中央の「ワン・カナダ・スクウェア」をはじめ、7 つのタワーのデザインを手掛けました。この巨大再開発計画が成功したのは、ロンドン中心部とこのドックランズが自動運転のドックランズ・ライト・レイルウェイによって繋がったためです。交通機関を含めた巨大開発が大きな成功を収めた一例です。

地上235m の「ワン・カナダ・スクエア」を中心としたカナリー・ワーフ地域

「ドックランズ・ライト ・レイルウェイ・ステーション」

鉄道網と繋がった香港の金融拠点

次に香港の「インターナショナル・フィナンシャル・センター」(IFC / 2004 年)を中心とした開発プロジェクトです。超高層タワーの「IFC」と「IFC2」、そして「フォーシーズンズホテル香港」が建ち並び、足元には鉄道の駅が、その上部には巨大なショッピングセンターを配置しています。このセントラルと呼ばれる駅から、鉄道によって空港を含めた香港の様々な地域に繋がっています。プロジェクトのマスタープランやタワーのデザインを私たちPCPA が手掛け、約20 年の歳月を掛けて完成しました。

香港の夜景。中央のタワーが「IFC」

開発地域の模型

「人のための空間」の創出と歴史的都市との調和

次にイタリア・ミラノにある「ウニクレジット本社ビル」(2013 年)を含めた開発プロジェクトです。これはイタリアの地域鉄道網と一体になったプロジェクトで、鉄道駅は地下に配置しています。ここでは地盤を上げ、その下に鉄道や駐車場などを配置したことにより、上部に車が入り込まない、人のための空間を創出しました。道路レベルには公共交通機能を配置して、人のための空間はその6m 上になります。この空間にはいくつかの穴がありますが、これは鉄道駅などが入る地下空間に自然光を採り入れるためです。断面的に見ると上から本社ビル、2 層分の商業施設、交通機能という配置をしています。商業施設は現在大変賑わっており、特に青果コーナーはヨーロッパ最大規模として有名です。キャノピー部分には太陽電池が設置され、公共空間の照明をまかなっています。このプロジェクトは歴史的建造物が多く存在するミラノという街に、交通施設と一体化した新しい建物をどのように組み込むのかという挑戦でもありました。

イタリア・ミラノにある「ウニクレジット本社ビル」

イタリア・ミラノにある「ウニクレジット本社ビル」

イタリア・ミラノにある「ウニクレジット本社ビル」

マスタープランをベースとして少しずつつくり上げた街

続いて、米国・ペンシルベニア州フィラデルフィアの「FMC タワー・サイラ・センター・サウス」(2017 年)です。私たちPCPA がアムトラック(全米鉄道旅客公社)などと共に大きなマスタープランをつくり、少しずつ建物やオープンスペースを加えていったものです。大きなマスタープランをベースとして、オフィス・レジデンシャル・駐車場・公園・既存の鉄道駅などをうまく組み合わせることにより、生き生きとした街をつくり上げ、大変評価されたプロジェクトとなりました。アムトラックという非常に大きな組織と協働したこのプロジェクトは、長い時間を掛けて少しずつ街づくりを進めていったことも特徴的でした。

次回、後編に続く。

開発地域とその周辺を俯瞰する

「FMC タワー・サイラ・センター・サウス」

フレッド・W・クラーク

ペリ クラーク ペリ アーキテクツの創立メンバーであり、現在、同社の共同代表を務める。
主なプロジェクトは、ニューヨークの「ワールド・ファイナンシャル・センター」、クアラルンプールの「ペトロナスタワー」、日本の「日本橋三井タワー」など。
1969 年の学生時代に建築家・シーザー・ペリと出会い、1970年にテキサス大学を卒業後、ペリがデザインパートナーを務めていたグルエン・アソシエイツで働く。東京の「在日米国大使館」などの設計に携わり、1977 年にペリと共に建築設計事務所を設立

[ペリ クラーク ペリ アーキテクツ]
http://pcparch.com

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