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人が集う場所をつくる

貴方は日本の「倉吉パークスクエア」(2001年/倉吉市)で人々が集まって楽しめるヒューマンスペースをたくさん設けていますね。これは当初クライアントから求められたものではなく、貴方が提案されたことと聞いています。

ペリ

そうです。クライアントが想定していない仕掛けを提案して、より大きな利益を提供することは、私たち建築家の重要な役割の1つです。このプロジェクトでは「ワールド・フィナンシャル・センター」(1986~88年/NY/以下、WFC)のようなアトリウムも多く設けていますが、私はこうした人の集まる空間を非常に重視しています。人々が出会い、新しい交流やアイデアが生まれるこのような空間は、都市で暮らす上で非常に大切で、建物の中にもこういう場所があれば、そこはとても居心地の良いものになります。

建物の中に空間をつくると言うより、人が集う小さな都市をつくられたのですね。

ペリ

どのような社会にも、人が集まることとその手段は不可欠だろうと私は考えます。建物とは人が集うことのできる場所です。だから私はそれを計画する際に最善を尽くしてその長所を織り込み、建築をつくってきました。「WFC」では当初ウィンター・ガーデンは計画されていませんでしたが、私たちが提案してとても気に入ってもらえました。とても素敵なスペースで、非常に良く利用されています。

貴方のそういった発想はどこからくるのでしょうか。生い立ちが関係していますか?

ペリ

そうかもしれません。ラテンアメリカでは暮らしの中でそういうスペースが非常に大事な役割を担っています。スペインやイタリアといった南欧諸国でも、人が集うという目的のための空間がつくられています。他者と交流したいという欲求は、人間の性なんでしょう。
そう考えると建物周りの屋外スペースはきわめて重要なものです。ここも建物の一部であり、建築家が責任を負うべき空間です。こういう建物と都市景観を繋げる部分の設計においても大切になるのは、その街のためを思うこと。つまり都市に対する敬意です。

都市において人々が自由に出入りできる、広場のような公共空間を上手くつくるにはどのようなことを考える必要がありますか?

ペリ

公共の広場は都市においてとても重要な空間です。人が出会ったり楽しんだりできる広場のような空間は人々にとって魅力的にプログラムされた場所である必要があります。過去に広場は宗教的な集会や地域の集いなどたくさんのアクティビティが行われました。そのような広場を活性化させるための何かが必要です。広場やそれを取り巻く建物だけを考えても上手く解決できません。
大きさという点から考えると、広場は大きくなりすぎるべきではありません。小さめの広場はより活気のある傾向があります。ロックフェラーセンターの広場は割と小さいですが、とても賑わいがあります。また私は個人的にローマのパンテオンの前にあるロトンダ広場が好きなのですが、それはそこがとても小さな広場だからです。かつてはデッド・スペースでしたが、今ではたくさんのレストランやコーヒーショップがありとても生き生きとしています。人が誰かと出会うのにはとても良い場所です。

「倉吉パークスクエア」(2001年)のヒューマンスペース(左)と「ワールド・フィナンシャル・センター」(1986~88年)のアトリウム内部(右)

場のアイデンティティをつくる

現在、世界中の都市がとても似た存在になりつつあります。貴方は『Observations for Young Architects』の中で建築様式とその方法論についても記されていますが、この現状をどのように考えていらっしゃるのでしょうか。その場所に特有のデザインをつくるには、どうしたら良いのでしょうか?

ペリ

そうですね。今、私たちは大きな変化の真っ只中に生きています。世界がひとつに強く繋がろうとしています。同じ技術、同じ素材がどこでも手に入るようになった結果、残念ながら、現代のあらゆる都市は圴一になってしまいました。これを避けるのはとても難しい。選択肢自体がそうなっていますから。同じ素材を同じ技術でつくる。唯一違いを生むことができるのは形ということになりますが、そこに可能性があると思っています。その方法はいくつかありますが、例えば建物自体はNYでも上海でも同じものをつくることができるでしょう。しかし、それが建つ国や地域固有の歴史や文化にどのように対応(レスポンス)するかということにより、デザインのあるべき姿は変わります。先ほど京都の街の話をしましたが、建物を含めてその地域に存在してきたものこそ、人々が固有の「文化」として認識しているものですから。その地域の人々が「良い」と認識する建物をつくらなければいけません。そうでないとその建物は地域の人々としっかり繋がっていないということになりますからね。私たちが「ペトロナスツインタワー」(1998年/クアラルンプール)で実現したのは正にそういうことなのです。あの建物をクアラルンプールの人たちはとても喜んでくれました。

あのビルは非常にモダンであると同時に文化の香りがします。とても洗練されたデザインですが、このようなビルをあちこちに建てるのは、そう簡単なことではありません。

ペリ

そう、簡単ではありません。「ペトロナスツインタワー」のプロジェクトではずいぶん頑張りました。こうしたプロジェクトにはとても大きな労力が必要なのです。

「ペトロナスツインタワー」(1998年)

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