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都市を構成する2つのビルディングタイプ

建物を設計すること。そして都市について考えること。この両者に違いはありますか?

ペリ

先ほど述べた通り、私は建築家にとって都市に貢献することこそ究極の責任だと思っています。だた、建物というのは竣工したらそれで完成ですが、都市は常に変化し続けるという点が異なります。私たちにとって別の生き物のように、それをコントロールすることはとても難しい。都市はそれ自体が生きているということを私たち建築家は受け入れないといけません。私たち建築家が都市に対してできることは、できる限り良い結果が得られるように様々な要素を整えてやることです。それは簡単なことではないし、かなりの創造力が必要です。

貴方は著書『Observations for Young Architects』*4の中で、都市を構成する建物には「フォアグラウンド・ビルディング」、あるいは「フィギュア・ビルディング」という街で前面に出る建物と、「バックグラウンド・ビルディング」といういわゆる街の背景となる建物があると書いていらっしゃいますね。

ペリ

そうです。フォアグラウンド・ビルディングは、都市の中で特別な機能をもつ建物でもあります。劇場、美術館、政府関連施設などが代表的なものですが、これらは目立つ位置にあることを求められている建物です。私たちの手がけた仕事としては「ブルックリン裁判所」(2006年/NY)が正にそれに当たるでしょう。前面に公園のある敷地に建てられたクラッシック・スタイルの重要な建物です。
フォアグラウンド・ビルディングとは過去にはそうした存在でした。中世とかね。でも最近はどうも様子が違いますね。どの建物も前面に出たがって、都市の中にフォアグラウンド・ビルディングが多すぎます。皆が目立ちたがるのです。どの建物もどの建築家も。残念ながらそれが今、世界中の都市で起こっていることなのです。これをコントロールするためには都市を管理している行政が役割を果たす必要があります。

「ブルックリン裁判所」(2006年)

もう1つのバックグラウンド・ビルディングはどのようにあるべきでしょうか?

ペリ

バックグラウンド・ビルディングが美しくなれない理由はありません。目立ちたがることと美しい佇まいであることは異なります。歴史的な街にも都市の機能上はあまり重要な役割を担っていない建物はたくさんあります。何の建物か分からないこうした建物にも、なかなか格好の良い建物がたくさんあります。そういう建物は例えば高さや壁のラインが揃っていて、同じような特徴を備えています。しかし、似ているけれどバリエーションが、多様性があるのです。
建築を学ぶ学生たちは、学校で皆がフォアグラウンド・ビルディングを設計する訓練をします。奇抜なデザインに対して教師たちから「これは美しい形だ」と評価された学生たちは「自分は優秀なデザイナーだ」と思い、皆がフォアグラウンド・ビルディングをつくろうとするのです。しかし、時にはバックグラウンド・ビルディングをデザインする訓練もするべきですね。もし2つのタイプの建物をつくることができれば、都市におけるそれぞれの立ち位置の違いや役割について考えるでしょう。建築家は時にはフォアグラウンド・ビルディングをやり、時にはバックグラウンド・ビルディングを手がける。建物をつくる専門家だからこそ、私たちがバランスの取れた模範を示すべきなのです。

一体感のある街をつくるために必要なこと

現代の都市では多くの人々が同時に建物をつくったり、開発を行ったりしていますが、都市の一体感をつくるために、各々が敬意をもつということ以外にも何か規則のようなものが必要ではないでしょうか?

ペリ

とても難しい問題ですが、少なくとも大きさと素材は守るべきですね。方向づけさえすればその場所に一体感が生まれるような要素はたくさんあります。その中で大きさと素材は最も大事なことだと思います。

1つの大規模な開発計画に関わる複数の建築家を貴方がまとめた例として「ファンピア・プロジェクト」(1984年/ボストン)があります。基本的なルールを守らせながら、複数の建築家が力を発揮した例としてお聞きしたいのですが、貴方はこのプロジェクトをどのようにまとめたのでしょうか?

ペリ

このような協働作業はとても難しいものですが、「ファンピア・プロジェクト」ではそうしたデザインプロセスがとてもうまくいきました。残念ながらクライアントに関わる問題でプロジェクト自体は実現しませんでしたが。
このプロジェクトにはフランク・O・ゲーリーをはじめとして多くの著名な建築家が参画していましたから、彼らがデザインした後に「あれは良い」「これは駄目」とは言えませんでしたし、皆有能な人たちでしたから手取り足取り指図するわけにもいきませんでした。そこで最初に明確なデザインガイドラインを設定しました。そのルールの中で各々がたくさんのアイデアを出すことで、全体として一体感を備えながらも個々の建築家の力が発揮された素晴らしい計画となったのです。

ペリ氏がマスタープランを手がけたボストンのウォーターフロントの開発計画「ファンピア・プロジェクト」(1984年)

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